文字書きとはいえない

小説を書き上げるまでの記録

思い出語り。

去年出した本を読み返していた。

本と言っても、Twitterで書いていたSSの再録と短い書き下ろしを本にしたものだ。


ふと思い立って、書き下ろしだけ読むつもりだったのに、気づいたら一冊まるまる読んでいた。やっぱり上手いとは言えないけれど、よく書いたなぁとは思う。ちゃんと起承転結めいたものもあるし、それなりにオチもある。

当時も頭が沸騰するんじゃないかって思うくらい苦労して書いたはずなのに、正直、そんなふうには思えなかった。誰が書いたんだろうって思った。


そういえば、この本。当初は自分のためだけに作ろうと思っていたけれど、欲しいって言ってくださる人がいて、頒布することにしたんだった。

少ないとはいえ、交流めいたものもあった頃だったので、リップサービスだと思っていた。Twitterでほぼ全部読めるのに、誰が買うんだろう?って思っていた。

結局、サークル参加する予定もなかったので受注生産という形で受け付けて、注文数に少し足した部数を印刷することにした。(受注生産がタブーだとは知らなかった。今考えると恐ろしいことをしたと思う)


boothに登録して、Twitterで告知した。

どきどきした。自分のためだけに作るはずだったんだから売れなくてもいいんだ。って言い聞かせつつも、本当に全然売れなかったらメンタルやられるだろうなぁって怖かった。だから、しばらくしてメールが届き始めて本気でびっくりした。今でも、あのときの鼓動の痛さを覚えている。

結果、思っていたよりもたくさんの注文をいただいた。(例のごとく、客観的に見れば大した冊数ではない)中には、ブーストを下さった人も何人かいて、更に驚いた。そして、嬉しかった。


慌てて、おまけのSSを書いて、買ってくださった方全員に手書きのお手紙と一緒に、本に同封した。

ひとりひとりにお手紙を書くことも梱包作業も、とても大変だったけれど、作業している間じゅう、あたしは幸せだった。感謝の気持ちでいっぱいだった。

あれから、もう、一年が経った。思い出すたびに素晴らしい経験をさせてもらったなぁと思う。何も生み出せなかった自分が、まったくの真逆のことをしたのだ。とても不思議な気持ちだった。