文字書きとはいえない

小説を書き上げるまでの記録

BLは虚構だから面白い。

最近、小説ばかり読んでいる。

先週読んだ本、柴田よしき「聖なる黒夜 上・下」が大当たりだった。ちょっと前に「囀る鳥は羽ばたかない」を再読したのだけれど、その勢いで読んだからだろうか。


以前読んだ「李歐」もそうだけれど、あたしは主人公が堕ちていく話が好きだ。女の人が「堕ちていく」のは大嫌いなのに、男の人が「堕ちる」のが好きなのはどうしてなんだろう。女性である自分とは絶対的に違う存在だから、どれだけ生々しく描かれていても虚構としか感じないのかもしれない。本当は存在しているかもしれない世界だとしても。悪く言えば「対岸の火事」というか。「堕ちていく」こと自体、美化して見えてるんだと思う。


昔、ある商業作家さんの小説の二次小説を書いたことがあった。

主人公(男・受)は報われない恋をしていて(相手はもちろん男・攻)、それを隠しながら友人として付き合って来た。

けれど、長年の報われない悲しさに主人公はある日とうとう姿を消してしまう。

実直で純粋で鈍感な攻めは、いなくなった理由に気付きさえせずに、主人公を見つけ出して引き戻してしまう。このとき、主人公は「堕ちて」いたんだけれど、もちろん攻めはその理由にも気づかないまま「まともな世界」に戻そうとする。

どこまでも汚れを知らない攻めと、汚れきってしまった自分。もう、以前のようには過ごせるはずがなく、ふたりは悲しい結末を迎えてしまう。


あたしは、この作品の二次創作で主人公の「堕ちていた日々」を妄想して書いていた。どんな相手にどんなふうに犯されていたのか。主人公はどんな気持ちでそれを受け入れていたのか。穢されていく自分を俯瞰しながら、自分から手放したものをそれでもまだ求めてしまう、どこかでまだ相手が来てくれるんじゃないかと期待してしまう自分を嫌悪する主人公が書きたかったのだ。

綺麗なままの攻めと対峙したときの絶望とか嫉妬とか憎しみとか、愛情とか。そういうのを書きたくて書いていた。


何が言いたかったのかさっぱりわからないのだけれど、要するにあたしは「薄暗い話」が好きだということだ。もちろんハピエンも読むけれど、特にBLは薄暗い方がいい。救いがない方がいい。

BLは自分の女性という「性」が作り出すナマモノを見ずに済む世界だからこそ、好きでたまらないのだと思う。

そして、もしかしたらあたしも「堕ちる」ことを望んでいるのかもしれない。あの主人公みたいに。