日記を書くように書いてみる。
一時間かけて200字も書けてない。
全く書けない。日本語が不自由なレベル。
てにをは、なんてものではなく、そもそも日本語の文章自体が書けない。
コンビニの店員と客っていう、ありきたりな出会いひとつ書けない。
出会い方とさして、鉄板じゃないか。これ以上ないくらいにありふれていて、考える必要ないだろうと思って決めたのに、それすら書けない。
何がストッパーをかけているんだろう。たとえば、今書いている文章とどう違うのか。
日記を書くように書けばいいのか?
たとえば、
AがBと出会ったのは、Aがバイトをするコンビニだった。桜が満開の季節だった。
仕立てのいいスーツを着て、颯爽と自動ドアをくぐり、上品に踵を打ち鳴らしながら店内を歩く。襟の社章からすれば、近くの会社の社員らしい。季節はちょうど春だ。人事異動でこちらに来たのかもしれない。
Bは、毎日同じ時間にやってきて同じものを買う。たとえばそれが、煙草だったとしたらAにとってBはただの客のひとりとして終わったのかもしれない。
その日、Bはいつもより少し遅れて店にやってきて、
「今週の限定プリンはもうないのか」と、レジでAにたずねた。
そうなのだ。Bの目当ては、プリンだった。しかも、週替わりで出る限定プリンだ。まだ大学生であるAですら甘すぎて辟易する、女性をターゲットにしたプリン。生クリームがたっぷりと乗ったものや、ムースと二層になったもの。チョコレートそのものを食べているようなものなど。食後には到底食べる気がしないデザート。
Bは、それを目当てに毎日店を訪れていたのだ。
「すみません、今日の分はもう売り切れてしまって」
瞬間、Bが見せた表情にAは思わず吹き出してしまった。無愛想で表情のなかった顔が、まるでご褒美をもらえなかった子供のように、あからさまにしょんぼりとしたのだ。
思わず、続けた。
「あ、でも!明日はまた入りますから。よかったら、取り置きしておきましょうか?」
うなだれていた頭が勢いよく上がって、顔がぱぁと明るくなる。
「いいのか?」
「店長には内緒ですけど。あなた、毎日来てくれるし」
「名前を言えば良いのか?それとも名刺を……」
いそいそと胸のポケットを探るBに、
「あぁ、名刺なんて大丈夫です。えっと、Bさんですね」
胸にぶら下がった社員証を見て名前を確認する。ああ。そうか、そうだな。と恥ずかしそうに探っていた手を止めて、Bはあらためて、
「そうだ、そこの会社で働いている」と向かいのビルを指さした。
「じゃぁ、お取り置きしておきますね」
「ありがとう。たすかる」
後ろに客がいないことを確かめると、Bは相談なんだが、とカウンターに身を乗り出した。Bは、Aより20センチは背が低い。Aは腰をかがめて耳を近づける。
「……できれば、二個頼みたい」
「は?」
「今週のは特別美味いんだ。夜にも食いたい。いいか?」
ギャップ萌えとは、このことだ。怖いほど無愛想だった顔をさっと赤く染めて耳打ちするB。耳の先まで真っ赤になっている。
またしても吹き出しながら、わかりましたと返事をすると、Aは「笑うな」と不満げに眉を顰めた。
みたいな……。
なんだこれ。即興とはいえ、何の捻りもないし、この先どうなるんだろぅて思うような出会いでもない。
でも、一時間かけて書いた200文字よりははるかに話が進んでいるような…。
何か気負いすぎているのかもしれない。
仕事して頭冷やそう。
仕事終わって読み返したら、人称はおかしいし、最後名前間違ってるし。
ぐちゃぐちゃじゃないか。
ほんとにもう、やめた方がいいな。恥さらしにもほどがあるわ。